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要約
- タイでの企業再編には、法的スキーム(合併・譲渡など)と組織体制(制度・人員統合)の両面を整えることが不可欠である。
- スキームはタイ特有の法制度や当局判断の不確実性があり、組織体制は制度統合や合意形成が難しく、どちらも綿密な計画が求められる。
- 企業再編は、形式的な統合だけでなく、組織運営・文化・制度の実質的な融合を進めることで初めて効果が発揮される。
第1回:企業再編の二つの側面(スキームと組織体制)
日本企業がタイで事業を展開する中で、現地法人のグループ体制を見直す「企業再編」が注目されています。複数の子会社や事業拠点を抱える企業では、効率化や統制強化のために組織再編を検討する動きが増えています 。特にタイでは投資奨励措置(BOI恩典)により事業会社を増やした結果、グループ内にムダや連携不足の課題が生じているケースも多く、それらを解決するため企業再編に踏み切る例も見られます。こうした企業再編には、大きく分けて二つの側面があります。それは「スキーム(法的・制度的な手法)」と「組織体制(人や組織の統合)」です。
・スキーム面: 合併や事業譲渡、株式譲渡など、どのような法的手続きを用いて再編を実行するかという側面です。タイの法律環境下で最適な手法を選択し、関連当局への申請・登記、税務上の対応などを適切に進める必要があります。
・組織体制面: 再編後にどのような組織を構築し、事業を運営していくかという側面です。組織構造の再設計、人事制度や業務プロセスの統合、新たな経営体制下での企業文化の調整など、ポスト統合の体制作りが含まれます。
企業再編プロジェクトを成功させるには、このスキームと組織体制の両輪が噛み合って進むことが重要です。一方に偏ってしまうと、たとえ形式上の再編が完了しても、期待した効果を生み出せない可能性があります。法的なスキームが整っても現場の組織が機能しなければシナジーは得られず、逆に理想的な組織図を描いても実行するスキームを誤れば現実性を欠いてしまいます。スキームの策定と組織体制整備の両方に目を配ることが、企業再編成功の鍵と言えるでしょう。
タイでの企業再編のご相談は、JMS Thailandまでお気軽にどうぞ。
第2回:スキーム検討の難しさ(法制度の曖昧さ、当局判断など)
こうした中、タイでも2023年2月より吸収合併が可能になりました。従来の新設合併と比べ一部の再編は実行しやすくなったと言われています。特に消滅会社の清算が不要になったこの法改正はタイでの企業再編スキームの選択肢を広げる画期的な変化です。
しかし、スキーム策定の難しさが解消されたわけではありません。新制度である吸収合併にも留意点は多く、例えば各種許認可の承継が可能かどうかはそれぞれの個別法律の確認や当局への事前確認が必要です。ライセンスの中には再取得に長い時間がかかり、統合スケジュールに空白が生じる恐れがあるため、適切な対応が求められます。このように、再編スキームに関わる法制度は必ずしも詳細が取り決められていない部分が残り、当局(省庁や税務当局など)の判断を仰がなければならない局面もしばしば生じます。複雑な手続きや各方面への対応を漏れなく進めるため、専門家の知見に基づく綿密なプランニングが欠かせません。
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第3回:組織体制検討の難しさ(制度統合のアプローチ、合意形成の難しさ)
企業再編では組織体制にも大きな課題が伴います。スキームが順調に完了しても、その後の現場の融合がうまく進まなければ再編効果は得られません。複数の会社を一つに束ねる場合、組織図や権限体系の再設計、人員配置の見直し、さらには人事制度やITシステムの統合など、対応すべきテーマは多岐にわたります。例えば給与体系・福利厚生の違いをどう擦り合わせるか、業務プロセスの標準化をどう進めるかといった問題は避けて通れません。また、国境を跨ぐM&Aやグループ再編では、言語や文化の違いも統合作業を一層難しくします 。このような制度・仕組みの統合には、綿密な計画と段階的なアプローチが必要です。
さらに厄介なのが、ステークホルダー間の合意形成です。再編によって利害が変化する関係者の調整は非常に難しく、プロジェクト関係者の多くがこの点に苦労します。統合プロジェクトでは、関係者間で意見対立が起こりやすく、合意を得るのに時間がかかることも少なくありません。具体的には、プロジェクトチーム内部での認識合わせ、統合対象となる各社の経営陣間での合意形成、そして従業員への説明・理解促進という三つのレベルで調整が求められます 。それぞれの場面で争点や不安材料を洗い出し、どこまで合意が必要かを見極めながら進めることが肝要です 。
合意形成を円滑に進めるには、早い段階から関係者を巻き込んで丁寧に議論を重ねることが欠かせません。日本本社や現地トップだけで物事を決めず、できるだけ初期から現地スタッフや各部門の声を反映させることが重要です。場合によってはプロジェクト横断の統合チームを立ち上げ、将来の新組織を率いる人材をリーダーに据えて検討を進めるのも有効でしょう。関係者の納得感を高めつつ、必要に応じて専門家のファシリテートを得ることで、合意形成のハードルを下げることができます。最後は新しい組織の目指す姿や理念を改めて全員に示し、一体感を醸成していくことが大切です。
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第4回:JMSの支援(スキーム設計と組織体制構築の両面支援)
以上見てきたように、タイでの企業再編は法的スキームと組織統合の両面で専門的な対応が求められる難易度の高いプロジェクトです。再編スキームの選択肢は企業の状況によって様々で、最適な形はケースバイケースで異なります。また、どんなに綿密な計画を立てても、人が動く組織面では想定外の課題が発生しがちです。こうした両面に目配りしながらプロジェクト全体を成功に導くには、豊富な経験に裏打ちされた包括的なサポートが不可欠と言えるでしょう 。
JMS Thailandは、企業再編におけるスキーム設計から組織体制構築まで一貫して支援できる体制を整えています。日本経営システム(JMS)は50年以上にわたり日本国内外で経営課題の解決を支援してきたコンサルティングファームであり、そのタイ拠点であるJMS Thailandでも、豊富な知見を持つコンサルタントが再編プロジェクトを強力にサポートします。具体的には、タイ法制度に精通した専門家ネットワークとも連携しつつ、最適なスキームの検討・実行をリードします。また、再編に伴う組織・制度・システム統合等の重要課題についても、経営陣と現場の橋渡し役となって課題解決を推進します。プロジェクト全体の調整・進捗管理を担い、関係者間の合意形成を支援することで、再編後の円滑な事業再出発に貢献いたします。
このようにJMS Thailandは、再編スキームと組織体制の両面から日系企業のタイ事業再編をサポートできる点が大きな強みです。単なる手続代行や部分的な助言に留まらず、経営者のパートナーとして現地事情と日本企業文化の双方を理解しながら並走いたします。企業再編はゴールではなく新たなスタートです。その後の発展まで見据え、皆様の挑戦を二人三脚で支援してまいります。
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