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要約
- 日本人駐在員・現地スタッフ・日本本社の三者間のギャップが、現地法人改革や現地化を難しくしている。
- 駐在員は短期任期・言語の壁・過重業務に直面し、現地スタッフは評価制度や情報共有の不足から主体性を発揮しにくい。
- 日本本社も距離や情報不足により適切な関与が難しく、三者の認識と役割をすり合わせる仕組みが必要となっている。
現地法人改革の必要性
グローバル展開する多くの日系企業において、タイをはじめASEAN各国に設立された現地法人の果たす役割は年々重要性を増し、その成否が企業全体の業績を左右するまでになっています。こうした中で問われているのが、「いかに現地化(ローカル化)を進めるか」という点です。元来、日系顧客の海外展開に合わせて進出したというケースも多いため、現地化が進んでなく、それでもこれまでは成り立っていたという状況があります。多くの海外現法では依然として日本人駐在員が舵取り役を務め、「日本人が頑張る」経営に依存しているため、真の組織改革が進みにくいのです。駐在員一人あたりのコストが高く、商品やサービスの競争力を失わせているということもあれば、国内の人手不足により日本人駐在員を派遣できないということも起きています。
しかし現地改革の現場を見渡すと、いくつかの構造的な障壁が浮かび上がります。それは、大きく「駐在員」「現地スタッフ」「日本本社」という三者それぞれに起因する課題です。駐在員は限られた任期と慣れない環境の中で重責を担い、現地スタッフは文化や情報格差から主体性を発揮しにくく、日本本社は距離の壁ゆえに現場との意思疎通や支援が十分とは言えません。この三者のミスマッチが絡み合うと、現地法人の改革努力は往々にして停滞してしまいます。以下では、この“三大課題”をひも解きつつ、それぞれに対しJMS Thailand(日本経営システム タイ現地法人)が提供する独自の支援策を具体的にご紹介します。
駐在員が直面する課題とJMSの支援策
ASEAN現地法人の最前線で指揮を執る日本人駐在員たちは、極めて大きなプレッシャーを抱えています。彼らは通常3〜5年程度の任期で派遣され、異文化の環境下でビジネス拡大という使命を果たさねばなりません。しかし、任期の短さゆえに、「1年目で慣れて、2年目で理解して、3年目でこれから、という時に帰国の内命」というようなことも起きています。従って経営の継続性が確保しにくくなっています。言葉の壁も大きな試練です。タイ語等のローカル言語が不得手な駐在員も多く、英語で何とか対応できる場合はまだ良い方で、場合によっては通訳なしでは意思疎通すら困難な状況に直面することもあります。たとえ言語が通じても、日本人特有のハイコンテクストな伝達様式と現地のローコンテクストなコミュニケーションとの違いから誤解が生じることもしばしばです。また日本側の常識や前提が通用しない異国で、営業のみならず人事・経理など馴染みのないバックオフィス業務まで幅広く担うケースも一般的です。実際、多くの日系企業では営業畑もしくは製造畑の人材が現地法人社長として赴任することが多く、コーポレート部門出身の駐在員はそこまで多くありません。その結果、慣れない間接部門の業務に忙殺され、「営業活動に十分な時間を割けず業績が上がらない」という負のスパイラルに陥りがちだと指摘されています。
加えて、日本本社と現地との板挟みも精神的負担となります。日本本社からは高い業績目標や細かな報告要求が容赦なく飛んできますが、本社側は現地の実情を深く理解していないことも多く、駐在員はそのギャップを埋める調整役を強いられます。本社から見れば「なぜそんな簡単なことに時間がかかるのか」と不満が募り、駐在員からすれば「それなら自分で現場に来てやってみてほしい(OKY:“お前ここに来てやってみろ”)」と言いたくなる——そんな苛立ちを漏らす声もあります。この「OKY」という半ば自嘲的な表現が示すように、本社の頭ごなしの指示と現場の状況との落差に、駐在員たちは日々ジレンマを抱えているのです。さらに、任期満了に伴う引き継ぎの問題も見逃せません。前任者からの情報引き継ぎが不十分なまま現地責任者の交代が起これば、せっかく進みかけた改革も一旦リセットされ、現地スタッフにも混乱が生じます。短期ローテーションの駐在員体制では、どうしても中長期の視点に立った改革の継続性が損なわれてしまいがちです。
こうした駐在員固有の課題に対し、JMS Thailandは伴走者として寄り添った支援を提供します。まず、現地法人改革の推進に不可欠なプロジェクトについて、JMSが専従コンサルタントを現場に常駐させ、駐在員と二人三脚で遂行する体制をとることが可能です。日本経営システム(JMS)の信条である「協同作業」や「実行にこだわる徹底したサポート」はASEANでも変わらず、時にクライアント企業内に深く入り込んで課題解決を主導します。このようにJMSは駐在員の「右腕」として機能し、過重な業務負荷を軽減しつつ改革のスピードアップを実現します。
また、JMSは駐在員への研修・トレーニング支援も提供できます。多くの日系企業では海外赴任者に対し手厚い処遇(住居手当や税務対応など)は用意しても、スキル面の準備支援は前任者からの引き継ぎ任せという場合が少なくありません。JMSはこのギャップを埋めるべく、赴任前後の駐在員に対し現地マネジメントに必要な知識とスキルを体系立てて習得させるプログラムを設計できます。具体的には、異文化理解や現地従業員のマネジメント手法を学ぶ研修、タイのビジネス法規や会計制度の基本を押さえるセミナー、財務諸表の読み方や管理会計の基礎知識を身につける勉強会など、ニーズに応じたメニューを用意します。こうした事前・事後研修により、駐在員は「何がわからないのか」を自覚し解決策のあたりを付けた上で現場に臨めるため、結果として本社への報告調整にも余裕が生まれ、精神的な負担の軽減にもつながります。JMSの支援は単なる座学に留まらず、研修で学んだ内容を実務に落とし込む段階でも伴走し、現地で直面する課題を一緒に乗り越えていきます。駐在員が本来のリーダーシップを十分に発揮できるように環境を整える――それがJMS Thailandの提供する駐在員向け支援の核心です。
現地スタッフの課題と主体性を引き出す支援
異国で奮闘する駐在員の傍らには、多数のローカル従業員(現地スタッフ)が日々の業務を支えています。彼ら現地スタッフの力を如何に引き出すかは、現地法人改革の成否を握る最重要ポイントです。しかし実際には、文化的背景や職場慣行の違い、さらに本社・駐在員との情報格差から、現地スタッフが指示待ちの受け身に陥り主体性を発揮できないという悩みが各社で聞かれます。たとえばタイのある日系企業では、「ローカルスタッフが自ら動いてくれず常に指示を待っている」という嘆きが管理職から上がっていました。これは決してその企業だけの特殊事情ではなく、「優秀な人材が採用できない」「有望な人材が育たない」「苦労して育てても辞めてしまう」という三重苦と相まって多くの現地法人に共通する課題です。実際、人材の流動化が進む東南アジアでは、複数の日系・外資企業が優秀な人材の奪い合いを演じており、魅力を感じない職場からは若手ほど早々に離職してしまいます。せっかく採用した人材も定着せず、残ったスタッフも日本人駐在上司の指示を待つばかり——これでは組織改革の担い手が育たず、現地化は一向に進みません。
このような現地スタッフの受け身傾向の背景には、いくつかの構造的要因が潜んでいます。第一に、日系企業特有の人事・評価制度の問題があります。多くの現地法人では依然として日本本社の人事制度をそのまま流用し、昇進・昇給も年功序列型で運用しているケースが見受けられます。その結果、現地スタッフからは「評価の基準が不明瞭で納得感がない」「どう頑張れば昇格できるのか分からない」「結局日本人ばかりが管理職になり、自分たちは報われない」といった不満の声が上がります。また、情報格差の問題も深刻です。本社や駐在員は自社のグローバル戦略や全社的な方針を把握していますが、それが現地語に翻訳・咀嚼されて現地スタッフにまで共有されることは稀です。海外拠点の事業方針をローカルスタッフが理解していない状況に陥っている企業も多いと言われています。ビジョンや目的を知らされず、現場は常に「日本から言われたこと」をこなすだけ──これでは主体的な発想や創意工夫が生まれる土壌が育ちません。日本人駐在員が「忖度」や「以心伝心」を現地社員に求めても通用しません。権威を尊重し波風を立てないことを好む東南アジアの部下たちは、自らの意見を積極的に主張しない傾向もあり、日本人上司からは「頼りない」と映るかもしれません。しかし見方を変えれば、現地スタッフが声を上げないのは“言わない”のではなく「言えない」雰囲気があることも原因となっているかもしれません。組織として双方向の意見交換が根付いていない限り、一方通行の指示伝達になりがちなのは致し方ありません。
これら現地スタッフの課題に対しJMS Thailandは、日本人駐在員に対するのと同様に、現地のスタッフにも寄り添ったプロジェクト推進を行うことで解決を目指します。JMS Thailandの現地スタッフが、お客様の現地スタッフに寄り添い、会社の課題を共に解決する中で、主体性が育まれることを狙っています。また、現地法人の人事制度や評価・報酬体系の見直しもJMS Thailandの重要なコンサルティングサービスです。JMSは日本本社とも連携しつつ、その国の実情や労働市場に即した公平で透明性の高い制度設計を提案します。例えば、年功ではなく成果と役割に応じて昇格・昇給が決まる仕組みに改め、社員一人ひとりがキャリアパスを描ける制度に転換します。制度変更には本社の承認が必要なケースも多いですが、JMSが間に入ることで現地の生の声を本社に届け、制度改革の必要性をデータとロジックで分かりやす示します。加えて、JMSは人材育成・能力開発支援にも注力します。単発の研修に留まらず、研修プログラムの体系整備までご支援が可能です。さらに、将来の幹部候補層をメンバーとして立ち上げられる社内プロジェクト(新規事業提案や業務改善チームなど)に、JMSがファシリテーターとして参加することで、普段は埋もれがちなローカル人材の才能の顕在化を試みるというご依頼にも応じます。「言われたことしかやらない」集団が、「自ら考え行動する」チームへと変貌を遂げることも夢ではありません。JMS Thailandは単なる経営陣・日本人向けのコンサルティングに留まらず、このように現地スタッフ一人ひとりの意識と行動変容まで視野に入れて支援する点に独自性があります。その結果、駐在員不在でも現場が回る自律的な組織づくりが可能となり、現地法人改革の土台が強固になるのです。
日本本社の関与の課題とJMSの役割
現地改革を語る上でもう一つ欠かせない視点が、「日本本社」の存在です。日本本社は現地法人に資金や人材を提供するまさしく「親」会社であり、全体戦略を策定する司令塔でもあります。しかし、地理的・文化的な距離の大きさゆえに、本社と現場の間には構造的な溝が生じがちです。その最たるものがコミュニケーションギャップとガバナンス(統治)の難しさでしょう。本社側の海外事業担当者にとって、遠く離れた国の法制度や市場環境を十分に理解した上で効果的な管理手法を確立するのは容易ではありません。日本でできることがなぜ海外でできないのか、理解に苦しむことも多いでしょう。言語の壁やタイムゾーンの差も相まって、「現地で何が起きているのか掴みにくい」というのが実態になっているケースもあります。一方、現地法人側から見ても、本社への報告業務や各種稟議のために多大な時間を割かれ、本業に専念できないという不満があります。「日本本社は細かい数字の報告ばかり求めてくるが、こちらが欲しい支援は何もない」と嘆く駐在員もいるほどです。こうした不満が高じると、本社と現場の信頼関係にひびが入りかねません。本社としては不正リスクや業績悪化を未然に防ぐためについ管理を厳しくしがちですが、現場からすれば過干渉にも映ります。一方で本社が海外任せで放任しすぎれば、現地法人が独自色を強め本社方針との乖離や内部統制上の問題が生じる恐れもあります。関与しすぎても足りなくても問題が起きる中で、適切な距離感と関与のバランスを見出すことが日本本社の課題と言えます。
さらに、本社と現地法人の間ではしばしば目的・ミッションが共有できているかという大きな問題が存在します。現地法人の経営課題を、本社と現地法人でそれぞれ適切に理解し、今何をすべきなのかが共有できている状態がベストな状態と言えます。特に問題になるのが、駐在員を派遣する際です。「とりあえず3年間よろしく頼む」というようなコミュニケーションになってはいないでしょうか。本社と現地法人で共有されたミッションを明示されないと、「1年目で慣れ、2年目で理解し、3年目に着手しようとして帰任」というサイクルになりかねません。駐在期間は会社によりますが、赴任からスタートダッシュが切れるように、駐在員が交代する際には、引き継ぎを含めてミッションを明確にし、共有することが重要となります。そのためには、日本本社と現地法人は、常に経営課題やミッション、目指すべき姿などを共有している必要があります。
JMS Thailandは、この日本本社と現地法人の架け橋として機能し、戦略と現場をつなぐ“設計者”の役割を果たします。JMSの海外コンサルティングの特徴の一つに「本社及び現地法人の経営層・ナショナルスタッフ(現地社員)との徹底した協同作業」があります。プロジェクトを進めるにあたってJMSは本社側キーマンと現地側メンバーの双方と密に対話を重ね、互いの認識ギャップを丁寧に埋めていきます。また、もう一つの特徴である「本社と現地法人の合意形成・意思決定の支援」に見られるように、JMSは第三者の立場から両者の合意形成プロセスそのものをデザインします。JMSがファシリテーターとなることで、本社と現地の担当者が本音を語り合える機会が生まれ、お互いの立場への理解が深まる、といった効果も期待できます。本社は現地法人の困難を知って計画に優先順位付けや調整を行い、現地側は本社の戦略意図を理解して前向きに施策を受け入れるという合意形成が実現できます。現地にとっても、「本社が目的を理解して支援してくれている」という安心感が生まれ、与えられたタスク以上の主体的な提案や報告が増えていくという好循環が生まれました。JMSが間に入ることで、従来は平行線をたどりがちだった本社と現場のコミュニケーションが活性化し、「二人三脚で改革を進めている」という一体感さえ醸成されるのです。
また、JMSはガバナンス体制の構築支援にも力を発揮します。本社が適切に海外子会社を管理しつつ現地の自律性も尊重できるよう、組織設計やルール整備をサポートします。必要以上に細部へ介入しなくても済むよう、本社と現地の役割分担(どの判断を本社決裁にし、どこまで現地に権限委譲するか)を明確化し、その代わり本社には全拠点横断でのリスク管理機能や人材育成支援機能を持たせるなど、本社・現地間の最適なガバナンス体制を設計します。JMS Thailandはこのようにハード(仕組み)とソフト(人間関係)の両面から本社—現場間の距離を縮め、戦略と現場実行を結び付ける架け橋として機能しているのです。
三者の繋ぎ手としてのJMS Thailand
日本人駐在員、現地スタッフ、日本本社――それぞれが抱える課題を見てきましたが、現地法人改革を成功に導くカギは結局のところ「三者がいかに連携し、それぞれの役割を果たすか」に行き着きます。どれか一つでも欠けていては改革は前に進みません。駐在員のリーダーシップと知見、現地スタッフの現場力と創意、本社の経営資源と戦略ビジョン、これら三つがかみ合って初めて大きな成果が生まれます。しかし現実には、言語・文化・距離の壁に阻まれて三者の歯車がずれてしまうことが多々あります。そこで求められるのが、三者の間を取り持ち結びつきを強めるプロフェッショナルです。
私たちJMS Thailandはまさに「三者の役割のつなぎ手」として、その重責を担う決意で現地支援に取り組んでいます。50年以上にわたり培ってきた経営コンサルティングの知見をベースに、タイを中心とするASEAN地域に腰を据えて活動を開始したのも、三者を繋ぐ存在が日本ではない海外にこそ不可欠だと確信したからに他なりません。課題に直面しているのは貴社だけではありません。同じ悩みを乗り越えた他社の事例や、第三者だからこそ提案できる解決策もあります。
JMS Thailandは常に「対話」を重視し、貴社の駐在員・現地スタッフ・本社それぞれのお立場に共感しながら伴走いたします。そして三者が一丸となって改革に邁進できるよう、時に潤滑油として、時にデザイナーとして道筋を示し、最後までやり抜くパートナーであることをお約束します。どうか私たちとともに、一歩踏み出してみませんか。現地法人の未来を切り拓く真の改革は、まさにこれから始まるのです。

