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要約

  • 海外市場では信頼できるデータや競合情報が不足しており、不確実性の中で仮説思考と多面的な情報収集が不可欠となる。
  • 多様な情報源(統計・専門家・アンケート・現地調査など)を組み合わせて検証し、断片的な情報から合理的な市場像を組み立てることが重要である。
  • 情報を集めるだけでなく、経営課題に照らして解釈し、戦略的な示唆と「次の一手」につなげることが市場調査の本質となる。

海外市場調査において「見えないもの」を「どう見るか」

海外の市場を調査し戦略を立てる際、私たちはしばしば市場の実態が見えてこない、という状況に直面します。公表されているデータや数字だけでは、市場の本当の姿をすべて捉えることはできません。新興国市場では、そもそも信頼できる市場規模データが存在しないことさえ珍しくありません。競合他社の具体的な戦略や現地での動きも、公の情報だけから完全に把握することは不可能に近いでしょう(産業スパイでもしない限り)。なかなか市場の実態が見えない、という状況は大きな壁と言えます。では、限られた情報の中で、私たちはいかにして「見えない」海外市場の実態を「見える」ようにするのでしょうか。


不確かなデータと競合情報の限界を乗り越える

海外市場では、市場規模や成長率といった基礎データが不確かだったり、まったく入手できなかったりするケースが多々あります。その場合は市場を構成する主要企業の動向や政府の経済施策、業界トレンド等マーケットを推測するしかありません。また、競合状況の把握にも限界があります。たとえば競合企業の販売戦略や流通チャネルについては、そもそも公開された情報が無いことも少なくありません。こうした競合の“見えない”情報まで完璧に知ることはできない以上、100%確実な答えを初めから求めるのではなく、不完全な情報下で最も合理的な仮説を構築することが重要になります。


確からしい推論を導くための多面的アプローチ

まず大切となるのは、そもそもの「仮説」です。「知りたい」ではなく、自社の経営課題やゴールに照らし合わせて「何を知らなければならないか」を明確にするためにも、初期的でも、粗くても良いので「仮説」が必要となります。その後、次の鍵となるのは、「多面的な情報源からの検証」です。単一のデータに頼るのではなく、あらゆる角度から情報を収集・分析して全体像を描きます。例えば、政府や業界団体が公表する統計データやレポート、現地の市場に精通した専門家へのインタビュー、消費者へのアンケート調査、実際に現地に赴いて行うフィールドワーク(実査)、さらに自社が持つ過去の販売データや知見など、利用可能なものはすべて俎上に載せ、吟味を行います。定量的なデータ分析と定性的な現場の声を両面から照らし合わせることで、断片的だった情報から筋の通った市場像を組み立てるのです。こうして検証された仮説は、更に追加のリサーチや小規模なテストマーケティングなどを通じて検証と修正を繰り返します。このプロセスにより、最初はぼんやりとしか見えなかった海外市場の実態が次第に明確になり、仮説の精度も高まっていきます。


情報収集を戦略につなげるために

闇雲に情報を集めるだけでは、有益な戦略は生まれません。ただ「求められた情報」をリストアップする作業に終始していては、それ自体が目的化してしまい、肝心の戦略立案に結びつかないのです。重要なのは、集めた多種多様な情報を経営課題と照らし合わせて解釈し、意味づけすることです。その際、「本当に必要な情報(Need-to-know)」にフォーカスし、「あれば嬉しい情報(Want-to-know)」に振り回されない姿勢が求められます。情報を集めた後に何を考察しどんな仮説を導くか――ここにこそ戦略コンサルティングの価値があります。我々は「この数字の裏には何が潜んでいるのか?」「なぜ競合はその戦略を取っているのか?」「もしデータが無い部分はどう仮定できるか?」といった問いを常に投げかけ、大胆な仮説を描くことを厭わないようにしています。単なる情報の寄せ集めを超え、現地市場で勝つためのストーリーを紡ぎ出す――その作業こそが戦略立案に他なりません。


JMS Thailandの強み:共に仮説を紡ぎ、次の一手を描くパートナー

JMS Thailand(日本経営システム・タイランド)は、「見えないもの」を「どう見るか」をともに考えるプロフェッショナルファームです。親会社である日本経営システム(JMS)は50年以上にわたり様々な企業の経営課題解決に取り組んできた、実績豊富な総合コンサルティングファームです。そのノウハウと現地ネットワークを背景に、私たちはお客様の持つ事業知見と当社の問題解決ノウハウ、市場調査ノウハウを掛け合わせて、妥当性の高い仮説を導き出します。調査設計の段階から綿密に擦り合わせを行い、情報の集め方ひとつから一緒に検討します。そして得られたデータの解釈や示唆の抽出においても、お客様と議論を重ねながら仮説を深め、貴社の「次の一手」を共に描いていきます。私たちは常にお客様と二人三脚でプロジェクトを進めます。単なる調査レポートの提供に留まらず、そこから踏み込んで「では次に何をすべきか」という具体的な戦略アクションの立案まで寄り添うのが私たちのスタイルです。

海外市場には未知の要素や不確実性がつきものですが、だからこそ多角的な情報分析と仮説思考が威力を発揮します。不確かな中からチャンスを見いだし、次の一手へと繋げる支援こそがJMS Thailandの強みです。データの陰に潜む「見えない実態」を一緒に読み解き、貴社の海外事業成功への道筋を描いていきましょう。